雨の日に来られたお客様。
トレンチコートにシルクハット
傘もささずに歩いてきたと思われる
その男性はうつむき加減で
劇場の椅子に腰をおろしました。
上映中も顔を上げることもなく
演目を観ているのか、聴いているのか・・
ときどきくちもとに
笑みのこぼれるところをみると
お芝居は楽しんでいただいているようでした。
少々ぬれたままのお客様が
そのまま座られても
ネコ足椅子がくふうして
しばらくすれば湿気も取れ
快適に座っていただいたことと
おもいます。
このお客様は一人で観劇をお望みでした。
ネコ足椅子はそのことにも気付き
静かに周りを淡い光で包んだのでした。
実際、劇場には他のお客さんもいらしたのですが、
きっとそのお客さんには、自分だけが
劇場にいると感じられたはずです。
演目が終わり、そのお客様が立ち上がるとき
ネコ足椅子のひじかけを優しくなでていたので
喜んでくださったのだろうと思います。
雨の日に傘もささずに劇場に一人で来られるかたは
一人になりたかっただけなのかもしれません。
でも、観劇を終えて、なにかがかわって
お客様が優しい気持ちで帰ることが出来れば
われわれにとって
それが一番の喜びでもあるのです。
ちなみに、
ネコ足椅子はその状況によって
お客様の空間を操ることが出来ます。
一人になりたいかたは一人に
二人きりなりたいお客様は二人だけの世界に。
たまに、お客様の意に反して一人になっていただく
場合もございます。
騒がれて、他のお客様のご迷惑になる場合です。
あまりうるさい方はほっぽり出してしまう時も・・
パイロットの脱出シートのように。
<支配人>
